2013年3月18日月曜日

水産加工工場が中国人を雇用!

宮城県南三陸町に、このほど再建された小さな水産加工工場が中国人数人を採用しました。経営者は津波で夫と工場を失った女性で、「工場を再開して地元の人たちの雇用を確保したい」というのが夢でしたが、働いてくれる人がいなくてやむを得ずということのようです。なぜそうなったのか、毎月、南三陸町を訪問している川崎市の松下さんに中国人雇用の背景を説明してもらいました。

 

現在、被災地では地場産業の水産業の人手不足が深刻と報道されています。水産業、水産加工業は南三陸町など多くの沿岸市町村にとって地場の主要産業であるだけにゆゆしきことです。
実際に現地に行って話を聞いてみると様々な背景があるようです。
人手不足なのは、ひとつは復興の遅れで地域を見限って人口そのものが減少していることがあります。
もうひとつは、大震災から2年が過ぎた現在でも国や自治体がガレキ処理のために多くの人を雇用しています。
このため、水産加工業まで人員が回らず、やむなく外国の方を雇用している工場が出てきたようです。この女性経営者のケースも同じようです。
もちろん、水産加工場の賃金が高ければいいのですが、皆さん、地場の中小企業で、借金をして必死で大震災以前に戻るべく努力をしておられるのではそうはいきません。
実際にがれき処理の仕事は国が賃金を支払って水産加工業に比べて相当高い水準に設定されているのです。
誰でも、同じ仕事であれば賃金の高い職を選びます。結果、水産加工業は、寒い、きつい、安い、と3拍子揃っているとみなされているようです。
外国人を採用せざるを得ないことは、工場にとっても大きなマイナスです。水産加工の仕事は単純なように思えますが、実際に拝見してみると実に細やかな考え方が必要な仕事です。例えば、我々、日本人であれば塩を機械にかけるような事はしません。ところが考え方も習慣も違う国の方にとっては問題の無い事もあります。これをひとつひとつ理解させて指導していくのは大変な労力を必要とします。即戦力が必要なのに戦力のない方を雇用せざるを得ないのは体力の無くなってしまった企業にとっては大きな負担です。
 大震災が発生して多くの方々が家も職も失った直後は高い賃金の国の施策は有効でしたが、しかし、せっかく復興しつつある地場産業の成長を奪ってしまってはなんにもなりません。今後は賃金が下げられないのであれば、地場産業に対して賃金補助を行うような施策も必要なのではないかと考えております。
                  (川崎 松下徳太郎)

追伸

山際 様
以前にも書いたことがありますが、南三陸町には非常に多くの仮設住宅があります。ご存知の通り、南三陸町で便利な地域のほとんどは津波で壊滅してしまいました。そのため多くの仮設は不便な地区や山の上に建設されています。私自身、いくつもの仮設にお邪魔していますが、坂がきついだけでなく、切り返さないと曲がれないような道を通らなければならない場所が多いのが現実です。これらの仮設を巡回するバスが運行されているのですが、バスが来るのは下の道までのため、バスを利用するためには坂を登り下りしなければなりません。これは仮設に暮らす高齢者の方々にとっては無理難題です。これが高齢者の行動を制限しているひとつの原因であると考えております。これを解決するには現地で活動しているNPOなどに働きかけて買い物や通院のための送迎サービスを開始してもらうのが良いと思います。現在も仮設に出向いてお茶を飲んだり、話をするNPOが存在しますが、それを一歩進めて高齢者に行動力を与えるべきと考えます。

今後、復興住宅が建設され始めると多くの仮設が虫食い状態になることが予想され、仮設での孤立が顕在化するのではないかと思われます。
それが現実となる前に行動力の弱い高齢者の方々を病院や役場に近い地域に集約し、送迎サービスを使って行動力を補うようなものが出来れば孤立化を少しでも防げるのではないかと思います。NPOから行政にお願いするのではなく、国や自治体が先頭に立ってNPOを育成するのもひとつの方法かと思います。
   松下徳太郎


                            

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